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エンターテインメント業界のキャスティング業務には、いまだ多くの手作業や煩雑なコミュニケーションが残されています。制作会社と芸能事務所の間で、候補者の選定やオーディションの調整などに時間と工数がかかることも、業界が抱える課題の一つです。
こうした課題をテクノロジーで効率化し、制作会社のキャスティング担当者の負担を軽減することを目指しているのが、株式会社トモビです。
トモビは、キャスティング担当者向けのデジタルプラットフォームを提供しています。候補者とのマッチングからオーディションなどのスケジュール管理、タレント情報のデータベースまで、キャスティング業務全般をサポートしています。
共同創業者兼CEOのラモン・ハーフ氏は、日本のエンターテインメント・芸能業界でキャスティングディレクターとしてキャリアを築いてきた起業家です。欧米に比べて日本のキャスティング業務のデジタル化が進んでいないこと、そして自身の日々の業務の中で非効率さを感じていたことから、トモビを立ち上げました。
現在は、Shibuya Startup Support(以下、SSS)のスタートアップビザおよびハンズオン支援を受けながら、日本のエンターテインメント業界におけるキャスティングの変革に挑戦しています。
今回のインタビューでは、起業を決意した背景、日本で起業することを選んだ理由、スタートアップビザ取得までの道のり、そしてSSSのハンズオン支援について伺いました。

―まず、ラモンさんの自己紹介と、どのような事業をされているのか教えてください。
ラモン氏:ラモン・ハーフと申します。苗字はハーフですが、純ドイツ人で、約8年前に来日しました。
現在は、株式会社トモビの共同創業者兼CEOとして、キャスティング業務用デジタルプラットフォームを開発しています。
私はもともとキャスティングディレクターとして、主に国際共同製作の日本人キャスティングや、日本国内のプロジェクトにおける外国人キャスティングを担当してきました。
欧米には、キャスティング業務用のサービスがありますが、日本では珍しいサービスです。
日本のキャスティング業界では、キャスティング担当者が案件ごとにその都度直接芸能事務所のマネージャーに電話やメールで連絡し、候補者のビデオプロフィールなどを提出してもらうという方法が一般的です。
このワークフローがあまりにも古く、非常に手間のかかるものでした。このような原体験から、「もっと便利な方法がないか」と考えたことが、現在の事業を始めたきっかけです。
―なぜ日本で、そしてなぜ東京・渋谷で起業されたのか教えてください。
ラモン氏:もともと日本でキャスティングの仕事をしてきたからです。また、アジアにはキャスティング業務支援ツールが少ないことも理由の一つでした。
またメディア業界においては、東京が活動の中心になっており、渋谷には、多くの芸能プロダクションやキャスティング会社、放送局などが集まっています。そのため、渋谷は事業活動のフィールドとして相性の良い場所だと考えました。
―日本国外のキャスティング業界とはどのようなネットワークがあるのでしょうか?
ラモン氏:私はもともとハリウッドの作品を中心にキャリアを築いてきたため、アメリカのチームとは継続的に情報交換をしていますし、最近ではイギリスなどの国際共同製作にも関わっています。
アメリカのキャスティングソサエティであるCSA(Casting Society of America)ともつながりがあります。
―多様なネットワーキングを有しているのですね。
ラモン氏:そうですね。これまでのキャリアや多くの出会いによって、ネットワークを築くことができました。

―外国人として日本で起業する上で、最初に乗り越える必要があったのがビザの取得だと思います。ラモンさんはどのようにスタートアップビザを取得されたのでしょうか?
ラモン氏:元々は、日本での就職活動のために特定活動ビザを取得し、就職活動を考えていました。その一方で、自分で事業を立ち上げ、起業したいという気持ちも強くありました。
人生において仕事の捉え方は人それぞれですが、私の場合は、自分が楽しいと思えることを仕事にしたいと考えてきました。
つまり、メディアや映画に関わる仕事がしたかったのですが、その場合職種がかなり限られてしまい、外国人として日本で就職活動をすること自体も難しいと考えていました。そうであれば、自分が楽しいと思える事業アイデアで起業しようと思いました。
そこで、スタートアップビザの存在を知り、申請準備に取りかかりました。
その当時は大学を卒業して間も無く、経営・管理ビザ取得に必要な資本金を用意できていなかったので、スタートアップビザが選択肢として最も有力でした。
―その後、渋谷区でスタートアップビザを取得され、1年が経ったと伺っています。これからのビザ更新についてはどのような見込みを立てられていますか?
ラモン氏:スタートアップビザでは最長2年間の滞在が可能*です。最初の1年間が終わり、更新手続きを終えたので、あと1年間はスタートアップビザで日本に滞在できる見込みです。
スタートアップビザの期限が切れたあと、継続して日本で事業を行いたい場合は、別の在留資格(経営・管理ビザ等)に切り替える必要があります。経営・管理ビザについては、2025年10月にビザ取得要件に変更、厳格化され、多くの外国人起業家には厳しい条件となりました。
ただ、ちょうどサービスをローンチしたばかりではあるものの、すでに最初の顧客もついているので、これから色々とうまくいくのではないかと思っています。
―スタートアップビザや経営・管理ビザについては、ビザ要件をしっかりと確認する必要がありますね。
ラモン氏:そうですね。ワーキングホリデービザも年齢的にはまだ利用できますが、将来の日本での滞在計画に影響しないよう、どのビザをどのタイミングで取得するかは、しっかり考える必要があります。
*スタートアップビザについてはこちらをご覧下さい。

―ここからは日本での事業活動についてお伺いします。ラモン氏の場合、主に日本の映像制作会社やプロダクション、芸能事務所とやり取りを行う機会が多いかと考えられます。またスタートアップ創業者として投資家とのミーティングも多いかと思われますが、こうした日本の企業や投資家とのコミュニケーション面について、どのように感じられてますか。
ラモン氏:まず難しいと感じるのは、VCの方と話すときに、日本のVCが求めている事業のステージと、現在のトモビのステージがずれていることです。
また、意思決定にすごく時間がかかると感じます。海外だと数か月以内で進む話でも、日本では非常に長く続くことがあります。
トモビでも、ある企業と1年以上にわたって議論を重ねていたのですが、結局ご縁がありませんでした。日本企業とさまざまな議論を重ねること自体は大切なのですが、とにかく時間がかかるというのは悩ましいところです。
―日本で事業活動を行う上で、外国人であることがハードルになると感じることはありますか?
ラモン氏:当初は、私が外国人であることに対して、日本のクライアントは抵抗を感じるのではないかと考えていました。日本の芸能業界が外国人である私を受け入れてくれないのではないかと感じていました。
ただ実際には、外国人であることをきっかけに興味を持ってもらえることもあります。「日本のタレントをもっと海外に売り込みたい」「日本のコンテンツを海外に展開したい」という声を多くいただきます。
私は日本語話者でもあり、海外の映像プロダクションとのネットワークも有しております。ここにチャンスを見出せるのではないかと考えています。起業家仲間からは、特に大企業を相手にするときは、日本人ではないから信用を得るのが難しいと話すこともあります。国籍を問わず、外国人起業家に対しても分け隔てなく向き合う日本企業が今後も増え続けることを願います。
ーSSSでは、スタートアップビザを発給した外国人起業家にハンズオン支援を行っています。これまでに受けられた支援のなかで、役に立ったと感じたものを教えてください。
ラモン氏:事業メンタリングでは、スタートアップへのメンタリング実績が豊富な藤田健司氏にお世話になっていて、経営戦略や事業戦略などについて幅広く教えていただいています。
また、SSS主催のコミュニティイベントに参加することで、新たなネットワークを構築できることも非常にありがたいです。
ただ、やはり一番大きいのは、スタートアップビザの支援をしていただいていることです。
―メンタリングも含めて、かなりSSSのサポートを活用されていますね。
ラモン氏:そうですね。SSSに関わることは楽しいです。似たようなバックグラウンドを持つ起業家と、Shibuya Bridgeで直接会って交流できるのも嬉しいですね。

―今後、日本でどのように事業を成長させていきたいですか?
ラモン氏:先日、サービスをローンチできたところなので、今後はもっと多くの制作会社やキャスティング会社に利用してもらえるようにしていきたいです。
また、近いうちにタレント側・事務所側向けのキャスティング業務支援ツールもリリースする予定です。多くのタレントの方々に登録、利用してもらいたいと考えています。
ある程度のタレント情報のデータベースを構築できた段階で、海外のタレント情報のデータベースとも連携させたいです。将来的には、アジアのタレント情報データベース、あるいは映画関連の仕事を扱うマーケットプレイスを作り上げたいと考えています。日本だけでなく、韓国、中国、台湾など、アジアのエンターテインメント業界を横断するプラットフォームを目指します。
―最後に、読者の方々に向けて、メッセージやアドバイスがあればお願いします。
ラモン氏:SSSの方々は、温かく向き合ってくれますし、丁寧で迅速な対応をしてくれます。
日本で本格的に起業しようと思っている方は、ぜひSSSへの訪問、スタートアップビザ等の外国人起業家支援プログラムへの応募を検討していただけたらと思います。
日本で事業活動を行う上で大変なこともあると思いますが、実際に自分がやりたいことをしながら努力すれば、結果はついてくると思います。ぜひ頑張ってください。
ー日本からアジア、そして世界へ。キャスティング業界のDXを推進するトモビの目指す未来と、渋谷からの挑戦について、詳しくお話しいただきありがとうございました。
取材・文/Keito Okabe 構成/SHIBUYA STARTUP SUPPORT PRチーム
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